そい じょ 

川崎さとみのプライベートブログです。 

青い月のバラード

 『青い月のバラード』加藤登紀子著 小学館文庫 を読んだ。

 

 日本人歌手で一番好きな人は?と訊かれたら、加藤登紀子さんだと答えるだろう。

心に残る歌詞、説得力のある歌唱法、彼女の唄を聴くと、いつも「本物だなあ」と思ってしまう。

 

 お連れ合いの藤本敏夫氏(故人)が設立した“大地を守る会”をずっと利用していることもあって、夫妻の食や自然への取り組み方にずっと興味を持っていた。

 

 歌手として、母親として、妻としての葛藤の数々。

共鳴したり、尊敬したり、驚いたりしながら読んだ。

読了後は温かい気持ちが残った。

 

 圧巻は藤本氏の葬儀後の描写である。

 

p222_ 人の形をした彼は、葬儀を終えると白い骨になってしまった。病気と闘った人の苦しみの跡が無残に残された白い骨。小さなかけらを拾いながら、私も娘も声をあげて泣いた。

 すべてが終わり、彼が小さな骨壷に納まってしまったとき、私は心の中にすごい勢いで風が吹くのを感じていた。戦場で相棒の死を受け止めた兵士のように、託されたものの大きさを感じていたのだ。

 その人の人生、その人が存在した意味は、死んだ瞬間から始まる。ましてやり残したことがいっぱいある彼の死は、残った人間にたくさんの“始まり”を与えていった。私は彼の残したエネルギーを受け止めて、これから走り出さなければならない。彼の死は。私の出発点なのだ。

 「お力落としでしょう」と、いろいろな人が私に声をかけてきた。でも、どうしてこんなときに力を落としていられるのか、私にはわからなかった。満身の力を込めて歩き出さなければいけない大事なとき、がっくりするわけにはいかない。