そい じょ 

川崎さとみのプライベートブログです。 

『冬の鷹』 吉村昭

 高校生の頃は、吉村昭福永武彦有吉佐和子城山三郎大江健三郎石川達三堀辰雄といった作家を好んで読んだものだった。

 

 その中でも吉村昭は「とても清潔な文章を書く人」という印象が残っていて、久し振りに読み直そうと思い、たまたま手にしたのが『冬の鷹』だった。

 

 これは、かの有名な「解体新書」の実質的な翻訳者である前野良沢(まえのりょうたく)と、世間で広く名を知られている杉田玄白との相克を題材にした歴史小説である。

勿論「小説」であるから、その人物像は作者独自の解釈であり、綿密な取材に裏打ちされているとはいえ、事実は本人のみぞ知ることなのだが・・・、これはまさに「今」私が読むべき本だったと感動した。

 

 前野良沢は、辞書はおろか、参考となる文献や指南すべき人物さえ居ない時代に、湿れる木から火を出すような努力、精進でオランダ語を和訳していくのである。

しかし、彼の名前は「解体新書」に記されなかった。その理由は・・・ということで、もし外国語の習得に心底苦労をしたことがある人ならば、涙を禁じえないであろう。襟を正さずにはいられなくなる。お薦めです!

 

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