そい じょ 

川崎さとみのプライベートブログです。 

“白い航跡” 幸福の定義

 吉村昭の“白い航跡”を読んだ。

あの森鴎外が医学者として大いに問題ある人だったのは意外で、興味深かった。

 

 主人公の高木兼寛は、類稀な向学心と努力によって医学者として大成功し、妻子にも恵まれるが、彼の「脚気の原因は栄養摂取の方法にある」という説は、正論であるにも関わらず、当時の医学会で受け入れられない。いつの時代にもあることだが、権力者の無知、頑迷が如何に多くの人命を奪ったか、という典型例である。

 社会的には充分な成功を収めた彼の晩年は、かなり特異な経路で終焉に向かっていく。

度重なる家族の死、医学会の派閥の壁。

果たして、その栄誉ある肩書きに見合うだけの幸せを、彼は実感していたのだろうか。

 

あらためて「幸せとは」を考えさせられる一冊であった。