そい じょ 

川崎さとみのプライベートブログです。 

MOXの危険性

 携帯で見ている方の為に、次のリンク先の文章を表など除き、要旨を抜粋して掲載します。

 

 米国では、原子力発電所の重大事故は、大きな放射能放出につながり、大量の被曝による何十人もの急性死(PF)や、何百、何千人もの潜在的ガン死(LCF)をもたらす可能性があることは、よく理解されている。

 

 これらの事故は、激しい事象(たとえば、蒸気爆発、水素爆発、あるいは燃料の破砕)を伴うものである。

 

 これらの事象は、非常に激しいもので、ヨウ素131、セシウム137などの揮発性及び半揮発性の放射性核種だけでなく、溶融から簡単に気化することのないランタン140や、アクチニドの核種(プルトニウムアメリシウムキュリウム)などの低揮発性の放射性核種も放出される可能性がある。

 

 アクチニドの放出は、とくに憂慮すべきものである。なぜなら、これらのほとんどは、吸入または経口摂取した際に、比較的放射能毒性の強いアルファ粒子を放出するからである。

 

 米国のNRCによると、重大事故の場合、軽水炉の中にあるアクチニドのうち最高5%までが放出される可能性があるという。

重大事故とMOX使用

 原子炉級のMOX燃料を装荷した軽水炉の場合、通常の低濃縮ウラン燃料を装荷した軽水炉と比べ、炉内に含まれるアクチニドの量が相当多くなる。

 

 これは、未使用の燃料の中の多量のプルトニウムの存在によるものである。照射の過程で、アメリシウム241やキュリウム244などのような重い核種が蓄積されていく。

 

日本では、プルトニウムの富化度13%までが認められている。炉内のアクチニドの量は、アクチニドのすべて核種で、MOX炉心の方が、5倍から22倍近く多くなっている。

 

 例外は、ネプツニウム239である。しかし、ネプツニウム239は、ベータ粒子放出体で、アルファ放出体より危険がずっと少ない。

 

表1:サイクル終わりの時点での低濃縮ウラン炉心及びMOX炉心内のアクチニドの量

 

 原子炉級MOX炉心のアクチニドの量が大きいということは、重大な封じ込め機能喪失事故から生じる影響(急性死や潜在的ガン死)が、低濃縮ウランだけを使った炉で同じ事故が起きた場合と比べ、ずっと大きくなる可能性があることを意味している。

 

 炉心の4分の1にMOXを装荷した場合、低濃縮ウランだけの炉心の場合と比べ、重大事故から生じる潜在的ガン死は、42~122%、急性死は10~98%高くなる。

 

 数値の幅は、アクチニドの放出割合の取り方による。炉心全部をMOXとした場合、潜在ガン死の数は、161~386%、急性死の数は、60~480%高くなる。

 

 炉心に占めるMOXの割合と、放出されるアクチニドの割合により、原子力発電所の半径110キロメートル以内の地域で、何千、何万という数の潜在的ガン死が余分にもたらされることになる。(この距離は、計算上の便宜のために選ばれたものであり、この地域の外でも影響が生じることはいうまでもない。)

 

 これらの計算は、放出割合(炉内にある総量のうち事故の際に放出される割合)が、低濃縮ウラン燃料の場合と、MOXの場合とで同じだとの想定の下に行われたものであり、事故から生じる影響の差は、炉内にある総量の差からのみくるものである。

しかし、実際はそうではないかもしれない。

 

 セシウムのような揮発性の核種の放出の割合は、40ギガワット日/トン以上の燃焼度に照射されたMOX燃料の場合、同様あるいはそれ以上の燃焼度の低濃縮ウラン燃料の場合と比べ、相当大きくなることを示す証拠がある。

 

とくに、フランスで行われたVERCOURSという実験では、使用済み燃料を1780kの温度に1時間保った場合、燃焼度47ギガワット日/トンの低濃縮ウラン燃料の燃料棒からのセシウムの放出の割合が18%でしかなかったのに対し、燃焼度41ギガワット日/トンのMOX燃料の燃料棒では、58%に達した(3)。

 

 MOXの使用に伴って増大する危険の大きさからいって、県や国の規制当局はどうしてこの計画を正当化できるのだろうかと問わざるを得ない。その答えは、原子力産業会議が発行しているAtoms in Japanという雑誌の中に見いだすことができる。『通産省科学技術庁、福島でのMOX使用を説明』という記事はつぎのように述べている。

MOX使用に関する公の会合に出席した市民が、『MOXを燃やす炉での事故は、通常の炉での事故の4倍悪いものになるというのは本当ですか』と聞いた。返答は、事故が大規模の被害を招くのは、燃料が発電所の外に放出された場合だけだ、というものだった

 

 MOXのペレットは焼結されているから、粉状になってサイトの外に運ばれていくというのは、実質的にあり得ない。だから、事故の際のMOX燃料の安全性は、ウラン燃料の場合と同じと考えられる。」

 この返答こそが、MOXの使用を計画している電力会社は、プルトニウムのサイト外への放出に至る事故の影響について評価する必要はないと判断した原子力安全委員会の間違った論理を要約しているといえる。

 

 この論理を使えば、日本の当局にとって都合のいいことに、MOX装荷の炉心にある通常の炉心よりずっと多量のアクチニドに関連した深刻な安全性問題を、無視することができるのである。上述の通り、MOX燃料は、低濃縮ウラン燃料と同じく、炉心損傷を伴う重大事故の際には、細かなエアゾールの形で拡散しうるのである。

 

 米国で研究されているメカニズムの一つは、高圧溶融噴出(HPME)で、これは、炉心溶融発生の後、原子炉容器が高圧で破損するというものである。このような事態となると、炉心が破片の形で格納容器の内部に噴出し、その結果、格納容器の温度が急激に上がり、封じ込め機能が失われ、放射性物質の放出が生じる可能性がある。

 

 MOXの使用はまた、重大事故の発生の確率を大きくする可能性もある。たとえば、冷却材喪失事故や発電所停電などの事象がある。これらは、米国の加圧水炉では、初期段階での封じ込め機能の損失のリスクをもたらす最大の要因と考えられている。これらの事象が炉の損傷にまで発展する確率は、炉心の緊急冷却が始まるまでに燃料棒の被覆管がどれだけ損傷しているかによるところが大きい。

 

 MOX燃料の熱電導率は、低濃縮ウランの場合よりも約10%小さくなっている。一方、MOX燃料の中心線の温度は、50%高くなっている。このため、MOX燃料の燃料棒に蓄えられている熱は、低濃縮燃料の場合よりも大きい。

 

 MOX燃料の中央線の温度と蓄えられたエネルギーとが低濃縮ウラン燃料よりも大きいため、冷却材喪失事故の初期段階における燃料棒の被覆管の温度の上昇と、被覆管の酸化率が、低濃縮ウラン燃料よりも大きくなる可能性があり(4)、冷却材喪失事故の影響の緩和のためにNRCが設けている規定を満足させることはMOX炉心の方が難しくなるかもしれない。

結論

 米国では、地域住民の避難が実施できる前に大量の放射性物質の放出に至るような原子力事故の平均的リスクは、100万炉年に5件ないし10件と見られている。米国には約100機の発電用原子炉があるから、これは、年間0.1%のリスクに相当する。NRCは、最近、原子力発電所で許されるリスク増大の幅を低く制限するガイドラインを導入した。原子炉級MOXの使用に関連した大きなリスク増大が、米国のこれらのガイドラインの下で受け入れられるかどうか極めて疑わしい。

 

日本の規制担当者にとって、日本の原子力発電所が米国のものよりリスクが相当低いと考えるのはばかげている。

 

したがって、日本は、軽水炉MOX燃料を装荷し始めるというその計画を再検討しなければならない。米国の例にならって、重大な封じ込め機能喪失事故が──他の国におけると同じく──日本でも起こりうるという事実を受け入れ、その文脈においてMOX燃料の使用のリスクを評価すべきである。このような評価を厳密かつ正直に行えば、日本の当局は、MOX使用に伴うリスクの増大は、日本人にとって受け入れることのできない重荷であり、将来の日本の原子力産業の焦点は、通常の低濃縮ウランを使った既存の原子力発電所の安全な運転におくべきだ、との結論に至らざるを得ないだろう。