そい じょ 

川崎さとみのプライベートブログです。 

イチジクとソロバン塾

 スタジオの向かいにある八百屋で、無花果を見つけた。虫食いひとつない綺麗な実。美味しくないだろうな、と思いつつも買ってしまう。あの何とも形容しがたい甘さが懐かしいからだ。

 

 今のように菓子類が豊富でなかった子供時代、グミ、椎の実、あけび、柿、栗、サルビアやレンゲの花の蜜…自然の恵みは魅力的なおやつだったが、中でもイチジクは圧倒的に美味しかった。

 

 近所にソロバン教室があって、そこの娘、よう子ちゃん(私より数学年上)には可愛がってもらった。何をして遊んだものやら、あまり覚えてはいないのだが、庭に大きな無花果の木があって、それによじ登っては飽きるまで無花果を食べたのだった。熟した実は、どれもぱっくりと割れていて、虫食いが多かった。しかし、割れていない実はまだ美味しくないので、子供たちは誰も手をつけなかった。無花果を「買う」という感覚は当時は無かった。あの無花果の木は今、どうなっているだろうか。

 

 今はどこも学習塾だらけだが、当時、学校以外でやる子供の勉強といえば、ソロバンや習字であった。私はどちらにも通ったことがないが、ソロバン教室はいつも沢山の子供が集っていて、活気があった。

 

 味覚、嗅覚は、時に古い記憶を呼び覚ますことがある。今でも私は無花果を食べる度に、あのパチパチという珠算の音や、よう子ちゃんのお父さん(先生)の「願いましては〜」という声が聞こえてくるような気がする。